高密度化技術でプリント基板業界を牽引

FICT株式会社は、「高多層基板」「半導体パッケージ基板」「高精度加工」の3事業を中心に、先進的な技術を持つプリント基板の総合メーカーです。1967年、富士通株式会社のプリント基板事業として、多層プリント基板製造を開始。2002年には、富士通インターコネクトテクノロジーズとして富士通から分社、独立しました。その後、2020年にファンドからの資本参加を受けて経営基盤を強化、2022年にFICTへと社名を変更しています。

同社は、「The Future is Interconnected」をブランドスローガンに、スーパーコンピュータのようなICTインフラ機器、ウエハープローブといった半導体関連機器などを、内部で支えるプリント基板を提供しています。事業開始以来、技術開発に積極的に取り組み、ものづくりで世界をリードしてきたとFICTの内川克美氏は語ります。

FICT株式会社
経営企画本部
広報・マーケティング室
室長
内川克美氏

「その代表例が、プリント基板の高密度化技術『F-ALCS(エフアルシス)』です。配線収容力を飛躍的に向上させて、高速信号伝送を可能にする技術で、半導体関連装置向けなど、60層を超える超高多層化基板を実現しています。またF-ALCSを生かしたガラス多層基板も開発中で、さまざまな企業から引き合いや問い合わせがある状況です」(内川氏)。

マーケティング観点でWebサイトの課題が顕在化

FICTは2021年の春に、新社名やブランドスローガン、ロゴの策定、会社紹介ムービーの制作などで当社が伴走支援しながら、翌年の社名変更に向けたブランディングを開始しました。Webサイトも従来のものから、構成やデザインなど、すべてを作り直す必要がありました。当時の社内にはWebサイト構築や運用の経験者がおらず、外部からの支援が不可欠だったといいます。

FICT株式会社
経営企画本部
広報・マーケティング室
西村京子氏

「一番大変だったのは、2021年2月から社名変更する2022年1月までの11カ月間で、新社名やロゴの策定からWebサイト構築まで、すべてを同時並行で進めなければならないことでした。特にWebサイトは従来使っていた写真や図版をすべて棚卸しして選び直し、構成を組み直す作業にとても時間がかかりました」とFICTの西村京子氏は振り返ります。

Webサイト構築の狙いはコーポレートサイトとして、新社名であるFICTという企業の認知度を高めること。製品写真は、もちろん社内に数多くありましたが、それを単純に並べてしまうと、カタログサイトのようになってしまいかねません。そこで新社名のロゴを含め、新たなデザインに合うような写真を選び直して、新しいWebサイトに掲載しました。

同社は2022年1月に新社名のWebサイトを公開してから、当社の伴走支援で定期的な改修やレポーティングといった運用を開始します。ただ、それを着実に続ける中で、マーケティングの面から新たな課題も浮上してきました。

株式会社揚羽
Webディレクター
大嶋宏己

「2年ほど運用してきたタイミングで、マーケティングの視点からWebサイトを改修する必要があると考えるようになりました。具体的にはWebサイトに訪問したユーザーに対して、製品やソリューションの情報を見やすくしたり、問い合わせにつながる仕掛けを用意することが不可欠だと感じたのです」と、Webサイト構築や運用を担当してきた揚羽の大嶋宏己は説明します。

一方、FICTにおいても、コンテンツの内容を見直すべきではないかという意見が出ていました。「製品紹介ページなどは、以前のテキストをそのまま流用した箇所もありました。公開から数年経ち、安定して運用できるようになったので、訴求する対象やメッセージを明確にしたり、SEO(検索エンジン最適化)対策のためにもWebサイト全体を改修すべきと判断しました」(西村氏)。

ユーザーから「何の会社か分かりづらい」の声

同社にとって、改修を決断する理由になったのは、Webサイトを見たユーザーから「何をやっている会社か分かりづらい」という声が上がっていたこともあります。「Webサイト上できちんと自己紹介することの重要性を改めて意識しました。私たちも取引しようという企業について、企業規模や資本金、従業員数などを詳細にチェックします。ビジネスにおける与信という意味でも、企業情報の分かりやすさは欠かせません」(内川氏)。

こうして2024年の春からWebサイトの改善に取り組み始め、その結果、トップページのキービジュアルを変更して、同社の事業内容が一目で直感的に分かるようにしました。また、企業情報の詳細である企業規模や経営体制、沿革などにたどり着きやすく修正し、初めて訪問したユーザーにとっても使いやすいWebサイトへと改善しています。

加えて、製品紹介ページの改善にも取り組みました。最初に取り掛かったのが、FICTを代表するテクノロジーであるF-ALCSの製品ページです。専門性の高い技術情報でも読みやすく、分かりやすくなるように、レイアウトや構成、テキストを全面的に見直しました。これにより、F-ALCSの内容がよく伝わり、サイト内での平均セッション継続時間が2割程度伸びる効果も出ています。この施策を横展開する形で、ほかの製品ページも順次改修する予定です。

FICT株式会社
経営企画本部
広報・マーケティング室
アレッサンドラ ディ ジェスト氏

当社は、Webサイト構築当初からアクセス解析のレポートを提供しており、大きな力になっていると、FICTのアレッサンドラ ディ ジェスト氏は明かします。「揚羽さんの支援を受けて、訪問してくれたユーザーが動きやすく、理解しやすいWebサイトになるよう、ユーザー・エクスペリエンス(体験)の向上を意識しながら、日々運用しています」(ディ ジェスト氏)。

顧客情報一元化の先に、MAツール導入も検討

さらに、マーケティング施策の一環として、2024年7月にはカタログダウンロードによるリード(見込み顧客)獲得も始めています。これまでは、誰でも自由にカタログを見られるようにしていたため、月に数百以上の閲覧があっても、見込み顧客の個人情報が分からず、製品に興味を抱くユーザーに全くアプローチできませんでした。

「カタログダウンロード用のフォームを設けたことで、見込み顧客のメールアドレスや電話番号といった連絡先が分かります。この情報を獲得すると、すぐに営業へ展開してアプローチしており、商談件数が確実に増えました。その中には、ターゲットとしている業界のキープレーヤーもあり、直接ビジネスに貢献できるようになったのはとても大きな成果です」と内川氏は力を込めます。

最近では、取引先も国内だけでなく、海外の企業が増えていて、取引額も海外の方が増加傾向にあります。とは言え、国外における営業力は限定的なため、FICTではWebサイトを効果的に利用して、海外の見込み顧客へのアプローチを強化していく考えです。

このようにWebマーケティングによる新規顧客開拓の可能性が高まる中、同社は営業が持つ名刺情報とWebサイトで獲得できたリード(見込み顧客)情報の一元化を目指しています。その上で、MA(マーケティング・オートメーション)ツールの導入を検討しているといいます。「Webサイトの改善にとどまらず、最終的には潜在顧客や海外からの問い合わせを増やせるよう、揚羽さんと協力しながら、マーケティング施策を立案、実施していきたいですね」と西村氏は前を向きます。

「Webサイト上でリード(見込み顧客)情報だけでなく、ダイレクトに問い合わせを獲得できるよう、海外で広く利用されているLinkedlnなどのビジネス特化型SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も活用できたらと考えています。さまざまなチャネルを幅広く利用して、商談の創出を図ります」とディ ジェスト氏は話します。

株式会社揚羽
ブランドマーケティング部
椎葉勇一

今後も当社は、FICTに伴走して、Webサイトの活用を支援していきます。マーケティング以外では、企業としての認知度向上が引き続き重要な課題です「ビジネスパートナーだけでなく、求職者、就職を希望する学生にまで、対象を広げた訴求が求められます。これからも幅広くトータルな提案をしますので、その中で優先順位をつけて、積極的にWebサイトの取り組みを進められると有り難いです」と揚羽の椎葉勇一は力強く語りました。